新医協は2025年5月9日に「日本学術会議法案に反対する声明」を出しました。 (PDF版はこちらから)

[声明]

日本学術会議法案に反対する声明

2025年5月9日
新医協(新日本医師協会)常任幹事会

 石破内閣が閣議決定し衆議院に提出した日本学術会議法案(以下法案)に対し、新医協はこの法案の廃案を求める。
戦前の日本は「科学三団体」(帝国学士院、学術研究会議、学術振興会)が軍国主義の道具と化し、国内外に多大なる惨禍をもたらした。医学界も日本医療団に属し戦争遂行の大政翼賛会に参加して細菌兵器開発や生体実験などの戦争犯罪にも加担した。
こうした誤りを二度と繰り返さないために我々は1948年、学術団体新医協(新日本医師協会)を設立したのである。
戦争加担への反省と、また世界の歴史の中で確立されてきた「学問の自由」が憲法23条に明記され、それに基づき1949年に日本学術会議が設置されたものである。
日本学術会議法前文には「日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。」とその基本理念を謳っている。しかし法案は、この前文を全面削除し、さらに、現行法3条の「日本学術会議は、独立して…職務を行う」という政治権力からの独立を明記した規定も踏襲していない。これらは、学術会議が真理の探究としての学術、研究をめざすことを表明し、時の政府からの学術、研究への介入を厳に慎むことを求めた現行法の解体とも言える内容である。
学術会議が「学者の国会」とも言われたのは、1984年までは学会所属等の研究者からの直接選挙によって会員が選任され、特別職国家公務員として独立していたためである。内閣総理大臣の任命制になった後も、あくまでも推薦は学術会議側にあり、総理大臣の恣意的任命は認められていなかった。
 2020年の菅内閣による、違法といえる学術会議会員6名任命拒否により顕在化した日本学術会議を変質させようとする政策の基本は、過去さまざまにあったが、典型的には2022年の「日本学術会議の在り方についての方針」の中で、「政府と問題意識や時間軸等を共有し」とあるように、学術活動を時の政権の意向や企業、軍事に組み入れようとするものである。
この間、学術会議では、1950年の「戦争を目的とする研究は絶対にこれを行わない」という声明を筆頭に、1967年、2017年等繰り返し声明を発表してきた。これは対外戦争をしない、させないための歯止めとも言える。
今回の石破内閣による法案は、現行の日本学術会議法に明記されたその出発点である前文を全て削除し、「国の特別の機関」である学術会議を「法人化」し、首相が任命する「監事」、「評価委員会」を設置して国が人選の支配を可能にし、時の政府の意向に沿う新組織と化すことである。これでは政治権力からの独立性と自立性を有する「ナショナルアカデミー」とはいえない。
 日本の学術、研究と「学問の自由」を守り、今の日本を新しい戦前としないために、日本学術会議案を廃案とすることを要求するものである。