新医協は2023年3月20日に学術会議改定法案の撤回を求める抗議声明を出しました。(PDF版はこちらから)

[抗議声明]

岸田政権による日本学術会議への政治介入に抗議し、
学術会議改定法案の撤回を求める

2023年3月20日
新医協(新日本医師協会)常任理事会

 日本学術会議は、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、日本の平和復興、人類社会の福祉に貢献する国から独立した団体」(日本学術会議法)です。
 科学者自身によって選出する会員で構成される会議であるにもかかわらず、2020年菅政権は理由を明らかにしないまま6名の任命を拒否しました。その不当性に国内外から一斉に抗議や説明を求める声が上がりました。
 任命拒否を引き継いだ岸田政権もその説明のないまま2022年12月6日「日本学術会議の在り方についての方針」を一方的に出してきました。この方針は「会員等以外による推薦など第三者の参画」を主張しました。続く「具体化検討案」(同年12月12日)では「政府・産業界・社会等と問題意識や時間軸を共有」することを求め、選考に介入するため会員以外の「第三者委員会」を設置して選考の規則や意見を述べ、その意見を学術会議が尊重するよう強いています。
 1949年学術会議が発足した最大の理由は、第二次世界大戦による加害、被害の歴史から社会科学、自然科学、技術等の学術がその自立性を失い時の政権の戦争政策に深く関わったことへの反省からでした。先進諸国でも長い歴史の中で、ナショナルアカデミーの自立を確立させてきており、それらの政府はその国の学術を代表するものとして、また世界と連携するものとしてその活動を尊重し、自律性を守ってきました。
 日本においては学術会議発足間もない頃から、政府によるさまざまな形の介入が行われてきましたが、同会議は多くの国民とともにそれを退けてきました。一方1985年の選挙からは公選制が学術領域推薦制となり、2005年には会員・連携会員の推薦制に変えられる等の介入があったとはいえ、2017年「軍事研究のための科学研究に反対する声明」で時の政府に対して科学的立場から堂々と政策提言を行って来ました。
 今回の岸田政権による学術会議への介入は、この政権が打ち出している大軍拡構想と連動しているといわざるを得ません。学術会議の前身ともいえる1920年発足の「学術研究会議」も1943年には内閣の任命制となり、学術そのものが戦争政策に取り込まれてしまった轍を二度と踏んではなりません。
 新医協は日本学術会議の設立趣旨とその役割を守り、その機能が十全に発揮できるよう、岸田政権による「日本学術会議の在り方についての方針」を撤回し、さらに任命を拒否された6名について、直ちに任命することを要求します。