会長挨拶

私は開業歯科医師の息子でした。年末になると母に「診療費未払いの家を集金してくれたらお小遣いをあげる」と言われて何軒かを訪問しました。玄関の歪んだ 扉を開くと、一部屋しかない居間に、家族が裸電球の下で食卓を囲む光景に出くわす体験をしました。請求書を渡すとお札をかき集めて支払ってくれるのですが、 幼い子どもたちがじっと私を見詰め、居たたまれない思いでした。どんな人にも医療が届き安心して医者にかかれる社会を作りたいとその体験を通して思いました。
私が学生だった時代、ポリオが大流行しました。そのさなか、新医協(新日本医師協会)の先輩達が生ワクチンの外国語文献を読み解き、全国に散ってお母さんたちに予防法を知らせ、国交のない当時のソ連から生ワクチンの輸入を実現する国民的な運動を繰り広げました。1960 年に6千人を超す患者が1963 年に100人以下に激減する効果でした。それを知って学生であった私は迷わず新医協に加わりました。

入会早々、病人が住んでいる現場一軒一軒を白衣なしで自転車で廻る保健師の皆さんに出会いました。病に悩む一人一人の生活の現場から医学・医療をおこし、それを国民のものにしていく決意はこの保健師達の地を這う活動を知って初めてできました。

新医協は、そこに集う医師・保健師・鍼灸師・薬剤師・歯科医師・食品監視員・保健所職員・養護教諭・保育士など、医学・医療を国民のものにしようと集まったあらゆる職種の人々とスクラムを組んで学び活動しています。沢山の講習・学習会も企画しています。どうか皆さんも私たちの歩みに加わって下さい。

 岩倉政城プロフィール

尚絅学院大学名誉教授、尚絅学院大学附属幼稚園園長、歯学博士

東京歯科大学在学中から新医協に参加し、郷土富山のイタイイタイ病発生地区の歯の蒐集に当たり、歯に含まれるカドミウムの測定を東京医科歯科大学大学院で開始、カドミウム汚染地図を発表。

1973年東北大学歯学部予防歯科に赴任し、宮城子どもの歯を守る会を市民と結成し小児・障害者歯科の普及活動に努める。宮城県の自治体と共同して住民参加型の学習健診の組織化に取り組む。HIVの患者診療回避の克服のため仙台市歯科医師会、仙台市耳鼻科医会と協力してHIV診療環境を整備。この間、降圧剤ニフェジピンの歯肉増殖と発癌リスクを日本高血圧学会で発表。また、口臭外来を設置し、自臭症患者の集団療法を実施、あわせて口臭簡易検出器を開発。東北大学助教授を経て2008年尚絅学院大学教授に着任。子どもの保健、母子保健、精神保健を講義する傍ら乳幼児虐待防止のため自治体とタイアップして母子手帳交付時質問票による虐待予兆の早期発見システムを開発。

2009年より尚絅学院大学附属幼稚園園長を兼任しながら放射能汚染による保育制限の調査とその実情を日本保育学会、国連防災会議などで発表。2016年7月のOMEP総会では、核発電所事故による子どもたちの深刻な「自然剥奪症候群」を全世界に発信する。


主な著書:                
「〝ボクってすごい〟〝アタシってすごい〟と思える子を育てる」「かみつく子にはわけがある」「五感ではぐくむ子どものこころ」「えんちょうピッピの子育てだより」「指しゃぶりにはわけがある」「口を通した子どもの発達」「口から見た子育て」 共著「保育にいかす精神保健」

主な論文:
「Clinical characteristics of halitosis : Differences in two patient groups with primary and secondary complaints of halitosis.」「A new portable sulfide monitor with a Zinc-Oxide semiconductor sensor for daily use and field study.」「震災後に幼稚園という日常をいかに早く保障するか 附:震災後トラウマと放射能汚染へのケア」「保育・教育現場でことばが伝わらないもどかしさー内言の豊かさを取りもどす道」「口臭の臨床とその心理学的アプローチ」「子どもと保護者に寄り添う保育-子育てが楽しくなる園に、国に-」「五感・体感からのこころの発達とことばの獲得」